シングルシードの養殖牡蠣専用に設計しました。

シングルシード養殖とは、牡蠣を一個ずつカゴに入れて育てる方法で、これにより牡蠣は丸みのある美しい形になります。三倍体種の牡蠣が使われることが多く、これらの牡蠣は産卵しないため約1年で成長し、年間を通して質の良い状態を維持します。

シングルシード牡蠣はカルチ養殖のものより殻が薄く、小ぶりでカップが深めです。シングルシード専用カキナイフは、シングルシード特有のカップの深さに沿って貝柱を美しく削げます。刃の上面は平らで、下面を立体的にすることで薄い刃でも強度を確保しています。

独自の「しなり」で生まれたシングルシード専用カキナイフ

意外にもシングルシード専用カキナイフはあまり目にしません。熊谷鍛冶屋でも、既存のナイフは、二倍体種のカルチ養殖牡蠣のために作られたもので、曲がらず欠けない強度を持っています。生産者に伺ったところ、シングルシード牡蠣は剥き身で出荷することがあまりない為、生産者はテイスティングするためだけにナイフを使っていたから、とのこと。
三倍体種のシングルシード牡蠣は、比較的殻が柔らかく、小振りでカップが深く、貝柱までのリーチが短いという特徴があることから、しなりのある刃が求められます。
ただし、薄刃で両面を平面にすると、強度に不安が残ります。そこで、熊谷鍛冶屋では上面を平面に、下面を立体にし、強度の難点を解決しました。
シングルシード牡蠣を剥く際には刃に指を当て剥く方が多いと聞きました。そのため刃幅を広くし、指を当てやすい独自の形状のナイフにしました。

オイスターバーなど飲食店さんでの使用にもおすすめ

オイスターバーなどの飲食店では、生食用としてお客様に提供するので、剥いたとき殻が混入してはいけません。また、片側の殻をお客様にお出しするお皿として使用するため、殻を壊してはならない場合が多い様です。そこで、薄い刃を採用し、こうした要求に応えるために設計されています。

全国牡蠣-1グランプリで試作品をヒアリング。
開発1年。現場の意見を採用しました。

開発にあたっては、ブレードの長さと刃の長さを徹底的に吟味しました。
岩手にはシングルシード養殖をしている漁師があまり多くありません。そこで、実際に兵庫、徳島、福岡などのシングルシード牡蠣を取り寄せ試作を重ねました。
さらに、2024年2月の全国牡蠣-1グランプリでヒアリングし、試作を重ね、漁師さんやオイスターバーのシャッカー（牡蠣を剥く人、カキ剥き職人）に使用してみた感想を集めました。刃の長さの好みは人それぞれですが、牡蠣が育つと大きくなる為シーズン終わりまでの牡蠣に対応出来る長さにしました。